海苔で巻いたキンパ

韓国のりと日本の焼き海苔は何が違う?原料・味付け・栄養・生産量を比較

ごま油の香ばしさと塩気が人気の「韓国のり」は、いまや日本のスーパーでも定番の商品です。日本の焼き海苔とは見た目も味もかなり違うため、「原料の海藻からして別物なのでは」と考える人も多いのではないでしょうか。インターネット上では「韓国のりは岩のりから作られている」という説明もよく見かけます。しかし、日本応用藻類学会の学術誌に2025年に掲載された研究によると、実態は少し異なります。この記事では、この論文や文部科学省の食品成分表、業界の資料をもとに、韓国のりと日本の焼き海苔の違いを、原料・味付け・栄養・生産量の4つの観点から比較します。

実は原料はほぼ同じ:どちらも「スサビノリ」が主役

まず原料から見ていきましょう。日本の板海苔は、環境省の資料によると、養殖の95〜99%がスサビノリという種類の海藻から作られています。では韓国はどうでしょうか。前述の論文によると、スサビノリは韓国の海苔の8割以上を占めています。つまり、日本の焼き海苔と韓国のりは、主な原料が同じ海藻なのです。

一方で、韓国ならではの特徴もあります。オニアマノリやイチマツノリといった、日本では主に天然のものを「岩のり」として採っている種類を、韓国では1990年代から養殖に使っており、最近では韓国の海苔生産量の1〜2割を占めるようになっています。「韓国のり=岩のり」という説明は、この一部の原料に当てはまる話であり、全体としてはスサビノリが主役というのが実態です。

海苔の歴史をたどると、両国の関係はさらに深いことがわかります。20世紀の初め、当時日本の統治下にあった朝鮮半島には、東京湾沿岸で行われていた海苔の養殖法や製造法が伝えられました。戦後も長く、韓国で生産される良質の海苔の多くは日本へ輸出されていました。日本と韓国の海苔は、同じ原料と技術のルーツを共有しながら、それぞれ独自の食文化へと発展してきたのです。

最大の違いは味付けと厚さ:ごま油と塩か、しょうゆとみりんか

両者の違いが最もはっきり表れるのは味付けです。日本にも「味付け海苔」がありますが、論文では、日本の味付け海苔は主にしょうゆやみりんで、韓国のものはごま油と岩塩などで味付けしたものであり、「別物」だと指摘しています。日本では何も味付けしていない焼き海苔が基本で、おにぎりや寿司に巻いて使うのに対し、韓国風の味付け海苔は、それだけでご飯のおかずやおつまみになる、完成した食品として食べられています。

韓国風の味付け海苔が商品として開発されたのは1982年のことです。これをきっかけに、韓国の海苔産業では分業が進みました。漁業者のもとで乾海苔を作る「1次加工業者」と、その乾海苔を仕入れて味付けや包装を行う「海苔メーカー」とに役割が分かれ、やがて大手の総合食品企業も参入して、現在の韓国のり市場が形づくられました。

韓国国内での海苔の使われ方も、日本とは少し異なります。論文によると、韓国の国内向けの海苔は、外食向けが約半分、家庭での消費が約3割、給食が約1割という構成です。1990年代にはコンビニでフィルム包装のおにぎりが売られるようになり、キンパの専門店も増えるなど、業務用の需要が大きく伸びました。海苔が家庭の食卓だけでなく、外食や中食を支える食材として広く使われているのが、韓国の特徴です。

厚さにも違いがあります。日本の乾海苔は、標準で1枚19×21cm、約3gです。一方、食品新聞によると、韓国の海苔は通常1枚2.2〜2.4gほどで、日本向けには3.0〜3.2gの厚さで作ってもらうことが多かったといいます。薄い海苔にごま油を塗って焼き上げる韓国のりの、サクサクとした軽い食感は、この薄さによるところも大きいのです。

栄養面の違い:油と塩が加わると何が変わるか

原料がほぼ同じである以上、海苔そのものの栄養価に大きな違いはありません。違いを生むのは、味付けで加わる油と塩です。日本の食品成分表(八訂)で、日本の焼き海苔と味付け海苔を比べると次のようになります。

100gあたり 焼きのり 味付けのり
エネルギー 297kcal 301kcal
脂質 3.7g 3.5g
食物繊維 36.0g 25.2g
食塩相当量 1.3g 4.3g

出典:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」、一般財団法人海苔増殖振興会の資料による。成分表には韓国風味付け海苔の項目はない。

日本の味付け海苔は、しょうゆなどの調味料が加わるため、食塩相当量が焼きのりの3倍以上になります。韓国風の味付け海苔は日本の食品成分表に項目がありませんが、ごま油などの油を塗って焼くため、焼きのりに比べて脂質とエネルギーが大きく増え、塩も加わります。製品によって油や塩の量はかなり異なるので、気になる人はパッケージの栄養成分表示を確認するのが確実です。

ただし、油が加わることには利点もあります。海苔に多く含まれるβ-カロテンは脂溶性のビタミンで、油と一緒にとると吸収されやすくなります。また、1回に食べる量は1袋数gと少ないため、油や塩の量も1回あたりでは限られています。毎日たくさん食べるなら塩分の少ない焼き海苔を基本にし、韓国のりは風味を楽しむ一品として取り入れるのが、バランスのよい付き合い方です。

海苔で巻いた巻き寿司

日本の焼き海苔と韓国のりは原料の多くが同じスサビノリ。違いを生むのは味付けと厚さ

生産量と輸出:世界の海苔の半分以上は韓国産

生産量で比べると、両国の差は歴然としています。論文が引用する国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、2022年の世界の海苔養殖生産量(生海苔ベース)は101万トンで、そのうち55.1%(56万トン)を韓国が占めました。日本は23万トン(23.0%)、中国は22万トン(21.6%)です。韓国の乾海苔の生産量は、2010年頃の100億枚ほどから、その後は130億枚前後で推移しているとされ、50億枚台まで減った日本を大きく上回っています。

韓国の海苔産業の特徴は、輸出の大きさです。2020年時点で、韓国の海苔生産量の53%が国内向け、47%が輸出向けで、輸出先は103か国にのぼりました。2020年にはアメリカが日本を抜いて最大の輸出先となり、中国向けの韓国風味付け海苔も増えています。韓国の英字紙の報道によると、2025年の韓国の乾燥海藻の輸出額は前年比13.7%増の11億3,000万ドルと過去最高を更新しました。韓国では海苔が「海の半導体」と呼ばれるほど、国を挙げた輸出産業になっているのです。

世界の海苔市場そのものも急速に広がっています。論文によると、世界の海苔の輸出総額は2015年の4.5億ドルから2023年には10億ドルへと、8年で2倍以上に拡大しました。2019年時点では、世界の海苔輸出の75%を韓国が占めています。韓国の海苔の輸出量は、2019年に約73億枚と過去最多を記録しました。日本と韓国では国内需要が頭打ちになる一方、中国や欧米、東南アジアでの消費が伸びており、韓国はこの成長する海外市場の最大の供給国になっているのです。

一方、日本は長く世界最大の海苔消費国でしたが、海苔の輸出は限られています。海外の寿司店で使われる寿司用の海苔も、韓国や中国のメーカーが供給しているケースが少なくありません。逆に日本は、国内の生産不足を補うため韓国からの輸入を増やしており、環境省の資料によると、韓国産海苔の輸入割当は2025年までに2015年の約2倍以上となる年間27億枚まで段階的に拡大されることになりました。

世界の海苔の供給は、国ごとに役割が分かれています。論文によると、海外市場では、韓国は韓国風味付け海苔、日本と中国は寿司用の海苔、タイはスナック海苔というように、各国の主力商品に違いがあります。タイは2000年代以降、韓国産の乾海苔などを原料にしてスナック菓子を製造・輸出するようになりました。原料を生産する日本・韓国・中国の3か国にタイを加えた4か国が、世界の海苔製品の供給を担っています。

シーン別の使い分け:焼き海苔と韓国のり、それぞれの強み

こうした違いを踏まえると、両者はどちらが優れているというより、得意な場面が異なるといえます。日本の焼き海苔は、それ自体の味付けがないぶん、具材やご飯の味を引き立てる「包む・巻く」食材です。パリッとした歯切れと磯の香りが持ち味で、おにぎり、手巻き寿司、巻き寿司、お吸い物などに向いています。塩分も少ないため、毎日食べる習慣にもしやすい海苔です。

韓国のりは、それだけで味が完成しているため、ご飯にのせてそのまま食べたり、おつまみにしたりするのに向いています。細かくちぎってサラダやナムル、チャーハンに加えれば、香ばしさと塩気をまとめて足せる調味料のような使い方もできます。ごま油の風味は、炒め物やスープとの相性も抜群です。

ちなみに、見た目のよく似た海苔巻きでも、韓国のキンパは日本の巻き寿司とはまったく別の料理だと論文は指摘しています。日本の巻き寿司が酢飯を使うのに対し、キンパはごま油と塩で味付けしたご飯を使うのが一般的で、具材も異なります。同じ海苔を使いながら、国ごとにまったく違う食べ方が育ってきたことは、海苔という食材の懐の深さを物語っています。

この記事のまとめ

日本の焼き海苔も韓国のりも、主な原料は同じスサビノリで、韓国でも8割以上を占めます。韓国では岩のり系のオニアマノリなども1〜2割使われていますが、「韓国のり=岩のり」というわけではありません。最大の違いは味付けで、日本の味付け海苔はしょうゆやみりん、韓国のりはごま油と岩塩が基本です。韓国の海苔は1枚2.2〜2.4gと薄めです。油と塩が加わるぶん脂質や塩分は増えますが、β-カロテンの吸収には有利です。生産量は韓国が世界の半分以上を占め、2025年の乾燥海藻の輸出額は11億ドルを超えました。包む・巻くなら焼き海苔、そのまま味わうなら韓国のりと、場面に応じて使い分けるのがおすすめです。

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